日本の米農家さんをインタビュー
日本の米農家さんをインタビュー
たけやま
伊藤さん
プロフィール
PROFILE
- 農家名
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たけやま
伊藤 享兆(いとう たかよし)さん
- 所在地
-
千葉県山武市
1986年、千葉県山武市(現)生まれ。
実家は100年以上続く米農家で、20歳のときに家業を継ぐことを決意し、株式会社たけやまを設立。
精米と品質管理に徹底的にこだわったオリジナルブランド「房の黄金米」を展開するほか、米作りを続けたい米農家を支援する委託作業システム「青田買い」など、いろいろな取り組みを行っている。
取り扱っているお米の品種
VARIETYインタビュー
INTERVIEW
生い立ち
祖父の姿に憧れて
田んぼを継ぐことを決意
ー米作りをはじめたきっかけはなんですか
専業農家の家に生まれたので、米作りには幼い頃から親しんでいました。コンバインにも、祖父と一緒に小学校低学年の時から乗っています。転機となったのは20歳の時。父から「この6反歩(約6,000平方メートル)の田んぼが足枷になっている。利益も出ていないので、米作りをやめるか、事業を100倍にするか、はっきり決めないといけない」と言われたのです。私は幼い頃に見たお米を作る祖父の姿が好きで、自分も米作りを続けたいと思っていました。それで、田んぼを受け継ぐことを決意しました。
こだわり01
美味しい米作りは
「精米と管理」が7割
ー米作りのこだわりはなんですか
最小限の手間で最高のお米を作ることにこだわっています。除草剤や農薬はできるだけ控え、収量に直結する水管理を徹底。稲が熱くならないよう常に水を張り、巡回で適切な水量や稲の状態を細かく確認しています。また、玄米の後の精米と保管も重要です。一般的に米作りでは「土・水・品種」が重要といわれることがあります。しかし、私たちは美味しいお米を作るためには「精米と管理」が7割ほど起因すると考えています。そのため、品種ごとに最適な精米方法を実施し、収穫後はすぐに低温庫で保管。これによって新米の風味を一年中保つことが可能になります。
ー育てているお米の品種を教えてください
私たちが主に育てているのは、千葉県の奨励品種である「ふさこがね」と「ふさおとめ」です。「ふさこがね」は比較的早く植えられ、収穫も早いのが特徴です。草丈が短いため、台風による倒伏(稲が倒れてしまうこと)被害が少なく、収量も多くなります。お米としては粒が大きく、冷めても硬くなりにくいのが魅力です。表面はしっかりしていながら、中はもちっとした食感があります。家庭ではお弁当やおにぎりにぴったりで、皿盛りで提供する飲食店にも大変重宝されています。
こだわり02
稲わらも籾殻も米ぬかも、
無駄になるものは一つもない
ー米作りから生まれた副産物はどのように活用していますか
私たちの米作りでは、稲から育ったものが無駄になることは一つもありません。収穫後の稲わらは畜産業者に活用してもらい、籾殻は固形燃料に再利用しています。精米で割れたり欠けたりしたお米は米粉にして加工したり、米菓の原料として供給しています。また、精米で出る米ぬかは、昔田んぼに戻していましたが、現在は米油の原料として活用いただいています。大切に育てたお米がさまざまな形で皆さんのもとに届くことは、農家として最高の喜びです。
こだわり03
米作りは
「土づくり」からはじまる
ー米作りのスケジュールを教えてください
米作りのスケジュールは地域や農家によって異なりますが、私たちの田んぼでは12月頃から土起こしを始め、土づくりを行います。2月末から3月にかけて種もみを水に浸し、苗を育成。4月中旬から下旬にかけて田植えをします。ここから秋の収穫まで続く水管理も重要な仕事です。幸いにして、この地域は利根川水系の「両総用水」から豊富な水が供給されており、水不足の心配はありません。千葉では8月上旬から収穫が始まり、刈り取ったお米はすぐに乾燥・調整して玄米にします。
豆知識
お米を買うときは
「生産者」にも注目してほしい
ー美味しくお米を食べるためのコツやお米を選ぶポイントを教えてください
お米を炊くときは、お釜に「氷」を3〜4個入れてみてください。沸騰までの時間を稼ぐことで、粒立ちのいいご飯になります。また炊き上がって、食べきれない分のお米は保温せず、すぐにラップして冷凍するのがおすすめ。保温するより、冷やしたものを再加熱して食べた方が美味しいなと私は感じます。またお米を買うときは、産地や銘柄だけではなく、ぜひどんな生産者が作っているかをチェックしてください。同じ品種でも、作り方、保管の仕方、加工の仕方で、味は変わってきます。
目標
ふるさとの田園風景を守り、
お米の魅力を世界に届けたい
ーこれから挑戦したいことや、夢はありますか
まずは、生まれ育った山武市の田園風景を守りたいと考えています。現在、山武市では米農家の担い手不足により耕作放棄地が増えています。田んぼを守るため、伝統を大切にしつつ新しい技術も積極的に取り入れ、安心・安全なお米を安定的に生産できる体制を整えたいと思います。そして、さらに大きな夢として「世界」にも目を向けています。日本の米作りの技術は世界トップクラス。この優れた技術を広め、より多くの地域でお米が食べられる環境をゆくゆくは作っていきたいです。
※掲載内容は取材当時の情報です